モリオカ三行日記(ブログ)

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zoom RSS 「こちら現場よりお伝えします」

<<   作成日時 : 2006/01/27 20:41   >>

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 年度間4本という(私にすれば)粗製濫造ペースで書いていた所謂「教育論文」の最後の1本をついさっき終了。私がこの手で書くものは要するに「現場からの報告レポート」に過ぎないので、まあ大きな視野からの評価は正直ようわからん(自分が採点教官だったらC付けそうなものもあるけど…)。しかし、その「現場ネタ」も正直在庫切れ。赴任して試してみたことについては一通りレポートし尽くしたので、後何年かしたらまたその改善だとかそういうことでネタが上がって来るかも知れないが、とりあえずしばらくはお休みさせて頂く。いや頂きたい。頂ければいいな…。

 こういうことやっていると、「文学研究だったんじゃないの?何でそんなことばっかり一生懸命?」などのご下問を頂いて、「えー、うーむ、あ、そう?」と間の抜けたリアクションを返す羽目になることもしばしばある。当然、状況的な要請というものもあって書いているのだが、そういうのをご存じの方からは「色々大変だねぇ…」と慰めのことばを頂きつつ、「エヘヘ」とこれまた真抜けたお返事を申し上げることにもなる。

 ただ、正直言えば、状況の要請、極論すれば(組織の)保身というようなところとはちょっと違うモチーフもなくはない。

 自分がここで行っている授業は、基本的には今まで自分が授業やらゼミやら公開講座やらで体験したり見聞きしてきたことの単純なコピー&トレースに過ぎない。もちろん、幾分かは時代や場所にあわせて自己流にパロディしていくことにはなるが、一応の学問領域が確立されている分野について講じようとすればある程度コピペは必然でもある。そして、これまで壇上に見上げてきた先生方は、そのほとんどが「実は教育などに全く興味がない」研究者ばかりであった(中には明確にそう断言するセンセイもいらした)。
 で、自分自身についても、専門性(というものが多少なりとも身に付いていればの話だが)を教育によってまるっと育てて貰った、とばかり思うつもりもない。傲慢に聞こえるかも知れないが、やはり(特に研究などをうっかり志してしまう)人間はどこかで他人の直接的な訓育を拒むような思考を抱きはじめるものではないだろうか。誤解なきように繰り返すが、これは師恩学恩とは全く別の話である。先行する研究に敬意を払わない、というのとも全然違う次元だ。

 で、こんなことをいうと、「じゃあなーんでそういう不誠実でつまんない体験を再生産してるわけ?」と非難を受けるかも知れないが、実は、そういう被教育体験は、私にとっては大変面白かったのである。何故なのかは未だによくわからない。大学に入り立てのころ、とある連続講義に出た時、見たことも聞いたこともない思想家とJ・ケージの関係について、上下白のスーツを着込みながら、そっぽを向いて、我もわすれて語り続ける壇上の人(まあ端的に言えばドゥルーズを語る篠原資明センセイだったわけですが)を眺めて、「おー、世の中には訳の分からんことがいっぱいあるもんだのぉ」と理不尽な興奮を覚えていた「アノ感じ」を忘れることは、たとえこの後ドゥルーズを一度も読まなくなったとしても、きっとないだろう。

 いま、自分は、授業することに関心がないかと言えば、そんなことはない。自分にできることは限られているなあ、と日々思いながらも、できれば貴重なお金と時間とを費やした以上のものを持って帰って欲しいなあ、と常々つとめているつもりではある。そのために、できるだけ効果的な方法や内容をと工夫したりもする。ただ、その、持って帰って欲しい「以上のもの」とは何か、と考える時、常に私の胸を去来するのは「アノ感じ」なのである。今、劣化したパロディを演じ、それを拙いレポートに起こしながら、一体何があんなに楽しかったのだろう、と確かめて見ることは、そう悪い気分でもない。その根底にあるのは、研究者が大学にいることの価値への、ごく素朴な信頼である。

 …というわけで、ではそろそろ自分もレポーターをお休みして研究者に戻ろうっと。

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私にしても外国に行ったこともなく参考書しか読んだことないような田舎の新入生にフレーム理論とラシュデイ問題をかましテキストにブルデユーの弟子の論文平気でで使うI賀S美先生のお姿というのはやはり目に焼き付いていますから。

大学というのは直接役に立たないが何を言っているのかわからない不気味なものの前にたじろぐ体験であるべきですよ(その意味で蓮実大先生は正しい)

もっともこちらの授業は「ドラえもん」「トトロ」をつかってごく穏便に済ましています。(日本で無茶な授業ばかりやってど顰蹙買いましたから)
yanase
2006/01/28 12:01
賛意を示して下さって大変嬉しいです。
我ながら反動的とは思いながら、ちょっとマジ顔でのエントリでしたので。
morioka
2006/01/29 01:20

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